誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



だが、その答えを聞いても黒髪はなお俺を見上げている。



本当になんなんだろう、こいつは。



〈真琴。そろそろ行かないと仕事に遅れるわよ。〉



そうだ、今日はあの大学生の所に行くんだった。



こいつらなんか放っておいてさっさと帰ろう。



(……ビビ。)


〈了解。〉



今俺が立っている所からフェンスまで少し距離があるけれど……、少し念じて足を踏み込む。



「わわわっッ!?」


「……チッ。」


「すごいね。」



普通の人なら完璧に落ちるほど足場が狭いフェンスの上に平然と立つ。



「……お前らと話している暇はない。
あと……。」



俺は少し振り返り、3人を睨みつける。



内側からせり上がるものを、逆らうことも止めることもせず、川の流れの如く放出させる。



さっきのお返しだ。



「殺気っていうのは、こうやって出すものだ。
さっきのアンタのじゃ……俺は何も感じない。」



そう吐き捨て、俺は飛び降りようとした時。



「……志浪 来都(シバライト)。」



「……は?」



「……頭の中に入れとけ。俺の名前だ。」



何を言ってるんだ、この男は。



別に答える必要も覚えておく必要もない。



「あ、じゃあ俺も。伊佐波 桜悠(イザナミ サユ)」



あいつらの言葉を無視して飛び降りた。



〈冷たいわねぇ。〉


「……ッ」



本当になんなんだ、あの3人は……ッ。



これじゃあ、まるで……ッ。



そこまで考えてしまった所で、その感情を振り払う。



その言葉の先は、言ってはいけないし思ってもいけない。



「集中しないと……。
今日も必ず護り抜かなきゃ。」



生きる意味さえあれば、あとは何もいらない。














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