誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「由樹?どうしたよ、そんな深刻な顔しやがって。」
「燐理……。」
仕事帰りの燐理は、僕の横にドカッと座り、燐理もまたいつものを注文する。
「"あいつ"のことか?」
「……うん。」
燐理も、似たような夢を見るらしい。
あの日から……。
「6年前のあの日、俺たちは知らねぇ所にいた。
近くにいたカイやあいつらのことは覚えてんのに、そこにいた理由が分からなかった。
あれから……何も分からねぇまま6年が過ぎたんだよな……。」
僕も燐理も、あと1歩のところで思い出せなくて。
でも、1つだけ分かっていることがあるならば。
僕たちは、その記憶を取り戻さなきゃならない。
その子が僕たちにとってどんな存在だったのか。
「もしかしたら……その子は今、苦しんでるんじゃないかって思うんだ。
僕たちが忘れてしまったことで泣いてないかな……。」
「あぁ。さっさと思い出さねぇとな。」
いつだったか、こうして燐理と誓いを交わした。
あの誓いは……ちゃんと果たせたのだろうか。
「……マスター、会計お願いします。」
「あぁ、はい。」
ふと耳に聞こえた声に横を見ると、フードを被ったお客さんが会計をしているところだった。
でも、なぜだか……その声に僕の心が反応した。
「由樹、どうした?」
「……あぁ、いや……何でもないよ。」
そうして視線を元に戻そうとした時、ふとその人がこちらを向いた。
顔は見えなかったけれど、向けられた瞳はとても優しくて……微笑んでいるような気がした。