誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
現在時刻 PM18:50
場所 とある倉庫
殺害予定時刻 PM19:00
俺と依頼主は既に倉庫にいた。
なぜ倉庫かと言うと、友人に呼び出されたらしい。
場所的にも人目に映らないから、殺すには都合が良さそうな場所だ。
「……ハァ。」
『怖い、ですか?』
「いや、なんていうか……不思議と怖くはないんだ。
多分、君を信じてるから?かな。
ただ、緊張はしているよ……。」
俺に依頼してきた時からほんの少ししか経っていないけれど、覚悟は決まっているみたい。
『大丈夫。必ず護る。』
「ハハッ、自分より若い子にそう言われるなんてね……。全く自分が情けないよ。」
仕方のないことだと思う。
殺されるなんて一生ない体験だろうし。
『……そんなことない。
プライドとかより人の命が一番大切だから。
だから、命を護るためだったらどんな惨めだと思うことでもした方がいい……。』
それが普通なんだ。
逆に殺しがあるこの世界が異常なんだ。
俺の目的は、この世界を通常の形に戻すこと。
殺しも犯罪も、何もない世界に。
「……大丈夫、かい?」
『あ……すみません。』
今日も、その目的への1歩だ。
『2分前か……。
少し、そこに立って動かないで。』
訳が分からなそうな依頼主の周りに、俺とビビが対角線上に立つ。
『……式神配置。』
懐から取り出したのは、小説とかに出てきそうな紙。
ビビの毛で作った式神用の札。
『いくぞ、ビビ。』
〈いつでも。〉
ボンッッ!!!
配置位置に札を投げると、札が具現化し、ビビの小さいバージョンの黒猫が2匹出現した。
正方形に配置した所で、陣を形成する。
『我ハ守護神ノ力ヲ持ツ代行者。
我ガ守護シ者ニ"鉄壁ノ陣"を形成ス。
神ノ力ノ代償ハ……我ノ命。』
呪文を口にし念じると、空間が輝きだし、依頼主を囲む陣が形づくられる。
『……ありがとうね。』
黒猫2匹を撫でてやると、小さく鳴きながら紙に戻った。
「あ、あの……。」
『それは貴方を護る最後の盾。
全ての攻撃にも耐え抜くし、もし俺が殺されることがあっても、その陣の元が壊されるまでは継続されるから問題はないと思う。』
「ちょっ、ちょっと待って!
さっき呪文みたいなのを言ってる時に、代償って聞こえた気がするんだけど、あれは……?」