誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
『……その陣は神の力で作っている。
神の力を代償無しに使うことは出来ない。
その代償は……俺の命、即ち寿命。』
「な……っッ!!??」
これはあまり言いたくないものだが、依頼主に聞かれたからには答えなければならない。
この力を初めて手にした時、2つの選択肢があった。
1つは、自分の命を犠牲にして神の力を使用すること。
もう1つは、神の力を使用せず自分の力で護ること。
だが、自分だけの力に絶対的な保証などありえない。
それを俺は身を持って感じている。
なら、誰かを護る為なら代償を払ってでも護りきりたい。
「そ、そんなの間違ってる……っ!
確かに人を護ろうとする君の考えは素晴らしい。
でも、それが代償を払うものだとしたら。
しかもそれが……君の命だとしたら。
それは間違ってると思う……。
だって、さっき君は言ったじゃないか。
"人の命が一番大切だから"と。
それは君の命も同等なんじゃないのか……?」
まさか、そんなことを言われるとは思わなかった。
ここまできても、この人は人の心配をするのか……。
つくづく優しい人だな……。
『確かに、そうかもしれない……。
だが、自分に関係の無い他人を護るためにはこうするしかなかった。
その選択をしたことに、後悔はしていない。』
依頼主はその答えを聞いて、悲しそうに俺を見た……気がした。
「君は……、」
カツンーーッ、カツンーーッ。
俺たちとは違うもう1つの足音。
「あぁれぇ?
なぁんで君がここにいるのかぁなぁ?
white castleさん?」
フードを被って顔を隠しているヤツが1人と……表に2人。
あの様子だと参戦はしてこないみたいだ。
『1人ずつ対戦とは、噂通りだな。
black killers(ブラック キラーズ)。
そうなると、順番的にお前は黒鮫(クロザメ)か。』
black killers。
この世界でこの殺し屋グループの名を知らない奴はいないだろう。
最近作られた3人グループ。
有名な理由は、"必ず仕留める"からだ。
そして、3人なのにも関わらず1人ずつしか出てこない戦い方。
こちらからすれば、トーナメントのようなものだ。
つくづく相手をバカにする連中だ。