誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
(blackkillers side)
「それで、無様とやられて帰ってきたわけか。」
ボスは椅子に座り、優雅に煙草を吸う。
この人と相見えるのは、例え何回したとしても慣れない。
そして……慣れたくもない。
「はい。黒鮫は少し相手を侮っていたようです。」
「バカが。いつまでも護り屋なぞに先を越されるな。
次こそ仕留めろ。
でなければ手段を選ばないようになるぞ。」
その言葉にどれほどの効力があるのか、この人は考えたことがあるだろうか。
俺たちにとってその言葉は、逃れられない呪縛であり……解きたい枷であることを、この人は理解しているのだろうか。
「……分かりました。」
そして……その言葉に未だ抗えないでいる俺たちは、まだ使命を果たせないでいる。
部屋を出ると、息苦しさから解放されたかのように息を吸った。
「話は終わったカァ?」
「あぁ。……黒鮫は平気なのか?」
「もぅ全然大丈夫だよぅ。
肩は当分上がらなくて、多分明日から熱は出るらしいけどねぇ。」
そう言いながらヘラヘラと笑ってみせた黒鮫だったが、少しぎこちない。
きっと思っている以上に、ダメージは大きい。
身体的にも……精神的にも。
「意外に……堪えるねぇ……。」
「だが、もう戻れない。
俺たちはもう最後まで歩かなきゃいけねぇ。」
途中で道を外してくれるような、そんな世界に生まれたなら、少しは違う関係になれたのだろうか。
それを知る術も、スタート地点に戻る術も、今の俺たちにはもうない。
俺たちはあの日から……全てを捧げた。
end