誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
学校であの3人と接触してから、そして依頼を完了した日から1週間経った。
今日は朝から雨が振り続けている。
「雨は気分が沈むなぁ。
ねぇ、ビビ……って今日はいないんだった……。」
ビビは朝から用事があるといって今日は別行動。
この雨だから屋上に行くわけにも行かず、昼食は人気の少ない空き教室で。
「流石に"今日は"見つからないかな……。」
今日こそは静かな時間を過ごせるといいんだけど。
あの日から何かと理由をつけては俺のことを嗅ぎ回っているあの3人組。
教室では今泉が。
教室から1歩出たら志浪と伊佐波が。
始めこそ放っておこうと思ったのだが、こんなにもストレスが溜まると思わなかった。
いつも屋上で接触されるから、今日こそは見つからないと願うばかりだ。
「ビビもいないし、あまり人と接したくない……。」
いつも傍にビビがいてくれるから安心する。
もうずっとそんな感じ。
ビビに縋っている部分がある……んだと思う。
それもいつかは抜け出さなきゃいけない。
「……ハァ……。」
1人になると、どうしても色んな事を考えてしまう。
カタカタ。カタカタカタカタ。
「え……、なに……?」
隅に積み上げられている机や椅子の塊から、小さな音がした。
え、まさか……ポルターガイスト……?
「いやいや、マジで……それはちょっと……ッ。」
音源をジーッと見つめる。
すると、そこから出てきたのは……
「……黒い……リス……?」
手にすっぽり収まるサイズの小さなリスが、モゾモゾと動いていた。
なんで学校にリス……?
不思議に思いながら見ていると、不意にリスがこちらを向き、瞳が合ってしまった。
「……。」
数秒間、お互いの動きが止まった。
(なんか、凄い見られてるんですけど… …?)
〈……アンタ、臭い。〉
「……ッ!!??」
リスの方から話しかけてきたことに驚いた。
だって、俺は今、能力を使っていなかったから。
無意識に、使ってたのか……?
ていうか、
「え……臭いかなぁ……。」
自分の服を摘んで匂いを嗅いでみる。
特に気にはならないんだけど。
〈……違う。そういうのじゃない。
アンタからは……僕と似たようなヤツの匂いがする。〉
そういうのじゃない…?俺と似てる…?
〈……アンタ、あの黒猫の契約者か。〉
契約者って……、
「ビビ、のこと……?」
〈……へぇ、ビビって名前なんだ。〉
「でも、契約者ってなに?
俺とビビはそんな関係じゃないけど。」
〈……それは、黒猫にでも聞けば?〉
黒リスは澄ましながらトコトコとドアに向かって歩いていく。
「ね、ねぇ……!!君の名前は……ッ?」
〈……僕はシヴァ。じゃあ、またね。〉
そう言って、黒リスーシヴァはドアの隙間から出ていった。
「……なんだったんだろう……。」
ビビとシヴァ。
似ているって言われても……黒色くらいしか浮かばない。
シヴァは俺のことをビビの契約者と言った。
なら、シヴァにも契約者がいるんだろうか。
「契約……。」
シヴァが言ったその一言が、どうしても胸に引っかかった。