誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「この公式を使って…………」
1番後ろの席って本当に楽だなぁ。
何しててもバレないし。寝れるし。
ていうか、高校の授業簡単なんだよなぁ。
だけど……。
チラッと横の人を見ると、目が合ってニコッと笑われた。
ニコッと笑うな!視線が痛いんだよ!
ていうか、授業中に目が合うのおかしいでしょ!
今泉はずっと俺の方を見てニコニコしている。
しまいには身体をこちらに向けてまで。
(ビビ、助けて……。)
〈嫌よ……。私もう話がつまらなすぎて限界。〉
……一応言っとくけど、ビビが授業に出ろって言ったんだからね。
なのに、その本人がつまらないとか言わないでよ。
「ねぇー真琴!!無視しないでよぅー!!
おーい!!!」
「……なに。」
仕方なく返事する。
だって、先生が今にも泣きそうな瞳でこっち見てるから。
「あぁー!やぁっと反応してくれた!!
ねぇ、この後お昼一緒に食べない?
来都くんと桜悠くんと僕と真琴の4人で!!」
「……断る。」
「えぇーー!!なんでよぉ……」
いや、それ明らか死亡フラグじゃん。
あんたたちに囲まれた時点で俺死ぬじゃん。
「お願いだよー!!
みんな真琴と話したがってるんだよー!」
俺は話したくないです。決して。
何やら1人でジタバタしてる今泉を横目に、黒板に向き直る。
〈少しくらい喋ってあげたら?〉
(疲れるだけじゃん。俺何も得しないじゃん。)
〈でも……ねぇ?その子、結構暴れてるわよ?〉
ん?と思ってまた今泉の方を見ると、さっきより凄いことになっていた。
もうジタバタじゃなくて……ドタバタ?
「一緒に食べようよーー!!真琴ー!!」
(……。)
〈……ね?〉
この勢いを通り越して、そろそろ泣き出しそうな気配までする……。
……ッ、あぁもう!!
「…分かったから、落ち着け。一緒に食べるから、な?」
宥めるようにそう言うと、今泉は音が付くくらいパァァッと顔が明るくなった。
「ホントに!?ホントのほんとにっ!?」
「……あ、あぁうん。」
「いぃやったぁーーー!!!」
バンザイまでして喜び始めた。
今、とりあえず授業中だからね?
あぁ、参ったなぁ。ともうこの時点で既に後悔し始めている俺であった。