誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「フンフンフフ〜ン♪」
「……ハァ。」
俺の横で鼻歌をしながら歩いている今泉……と、ため息をつきながら歩く俺。
すれ違う人が俺たちを驚くように見る。
このテンションの差に気づいてくれたなら助けて欲しいんですけど。
「いつも真琴には逃げられちゃうから、今日は本当に嬉しいんだー!!」
そう言って笑顔を向けてくる今泉。
その向けられた笑顔に、俺は何も返すことが出来なかった。
自分自身に対して向けられるものに慣れていなかったのだ。
それでも、そんなのにお構いなく1人でに喋っている今泉は見ていて楽しそうだ。
だからか……、
「……いつも楽しそうだね。」
無意識にそう呟いていた。
予想通り今泉はこっちを見て数秒固まって。
「……ふふふっ、うんー!!
でも、いつもじゃないよ?
僕は真琴といるから楽しいんだよ!!」
「……俺、と?」
俺は、特別今泉に何かしたわけじゃないのに。
ほとんど喋らないのに。
「当たり前じゃん!!
だって、僕ちゃんと分かってるもんー。
返事してくれなくても真琴が僕の話ちゃんと聞いてくれてること。」
……少し、びっくりした。
フードして顔を隠して返事もしないで。
今泉からは何も見えないはずなのに、俺のことをちゃんと見てくれているような気がした。
……案外、良い人なんだ……。
「……話してる時の今泉は好きだよ。
見ていて、飽きない。」
俺の口からついて出た言葉は、意外にも素直な感想だった。
今泉が俺に言ってくれたように、俺も今泉に対して言わなきゃと思ったから。
「うわぁー!真琴から告白してくれるなんてぇー!!」
「……それは違う、かな。」
「えぇー!?」
返す言葉に、多様な表情を見せる今泉は面白い。
今泉を眺めていると、ふと腕に抱えられているビビが俺を見上げた。
〈何か良い感じになったじゃない。〉
それはどことなしか嬉しそうで。
(……うん。そう、だね……。)
少し。ほんの少し。
こういうのも悪くないなと思った。