誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
同日、夜。
待ち合わせの電話ボックスに行くと、既に由樹さんがいた。
「……遅くなりました。ビビもありがとう。」
「ううん。僕が頼んだことだから。」
〈全く……こき使われるなんて。〉
だから、それはビビがいけないんでしょ。
「……じゃあ、ついてきて。」
誰かと夜の街を歩くのは、少しむず痒い気分になる。
本当に、何でこんな仕事に関わりたいんだろうか。
「あ、あの……聞きたかったんだけど。」
「……なに?」
「昨日、顔見ちゃったけど……大丈夫だったかな?」
今はフードを被っているからだろう。
余計、俺の顔を見てしまったことに罪悪感を感じているみたい。
「……別に、これは仕事の関係でやってるだけ。
あまり人に顔を知られるのは命取りになるから。」
「そう……なんだ。
じゃあ、僕が真琴くんの顔を見れたのは幸運だったんだね。」
……本当に変な人。
幸運とか、そんな大それたものじゃないからやめてほしい。
「それで、どこに行くのかな?」
「……行けば分かる。もう、着くから。」
視線の先に見えるのは、1つのbar。
1つ外れた道にあるわけでもないのに、そこだけは何故か空間が違う雰囲気に、俺も初めは慣れなかった。
カランコロン〜
客もほとんどおらず、静かな空間に主張しすぎない洋楽が噛み合っているその中に……ヤツはいた。
カウンターに座っているただ1人の客。
「おう。久しぶりじゃねーか、真琴。」
「……相変わらずで何よりだよ、燐理(リンリ)」
潮田 燐理(シオタ リンリ)。
1番簡単な説明だと………white castleにとって1番最初の仲間であり、影。
燐理もまた、由樹さんと同じようなもの。
たまたま通りかかった所で、燐理と燐理を囲む複数の奴らがいて。
少し見ていると燐理の方が優勢だったのだが、その隙をついて攻撃してきた相手に燐理が気づいてなかったところで、咄嗟に手を出してしまったのだ。
そうしたら、あとは大体由樹さんと同じで今日まできた。
燐理を仲間にしてしまった時、もう誰も仲間にはしないと決めたのに。
「そいつが言ってた"新しい仲間"か?」
「……まぁ、そんなところ。」
「海棠 由樹です。よろしくお願いします。」
「あぁ、タメでいいぜ。固いのは好きじゃねーんだ。」
お互いに相性が良いみたいで良かった。
「……じゃあ、俺はこれで。」
「なんだ、仕事か?」
「……今日は、ただの護衛。」
「おう、気をつけて行ってこいよ。
ビビもまたな。」
〈えぇ。また今度ね。〉
由樹さんが不安そうな瞳で見ていたけれど、気づかない振りをした。
「あ、あの……ありがとう。」
「……いえ。」
仲間にすると言った以上、そういうところはちゃんとしないとだと思ったから。
ただ。紛れもなく。
俺は自分の心の変化に気がつき始めていた。
それを気づかない振りしながら。
今の俺には、その変化を受け入れられるほど余裕がなかった。