誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
(由樹side)
barでは。
「由樹、だっけか?
よく仲間にしてもらえたもんだな。」
「いや、殆ど無理やりみたいなものだよ。」
本当に自分でもよくあの子が許してくれたと思う。
真琴くんは、……人を拒絶していた。
仕事柄っていうのもあるかもしれないけど、それとはまた別の……真琴くんの元になっているもの。
人と関わりを持たず、自分は1人でいるしかないのだと思ってしまっている。
「ハハッ、由樹もやっぱ苦労したんだな。
俺ん時なんか待ち伏せしても無視、話しかけても無視だぜ?心折れかけたからな……。」
「やっぱり簡単にはいかないね。」
今更ながら、あの子の傍にいてあげたいと思ったのはどうしてだろう。
他人を護るという仕事が凄いと思ったから?
自分も護ってもらったから?
きっと、そういう事じゃない。
ただ、単純に。自然に。
僕も知らない僕が、あの子の傍にいてあげたいと願ったのだ。
あの子の傍で。
きっと自分が傷つくことも厭わないと思うであろうあの子を。
止めたいんだと思う。
傷つけたくないんだと思う。
そう思えるほど、あの子は脆い存在なんだと初めて会った時に気づいてしまったから。
それを無視することなんて出来なかった。
「何やら難しい顔してんじゃねーか。」
「燐理は、どうして真琴くんの仲間になろうと思った?」
「俺か?俺はただ、なんつーか……惹かれた。
不覚にもカッコイイと思っちまったんだよ。
自分を偽りながら戦うアイツが。
あの振る舞いも、あの口調も、全てが本当のアイツを隠すただの嘘でしかねーのに。
その嘘でさえもカッコイイと思った。」
憂いを帯びた燐理の横顔は、初めて会った時のことを思い出しているんだろうか。
それとも、今までの日々のことだろうか。
どっちにしても……少し妬けるかな。
「僕たちの方が大人なのに……情けないなぁ。」
「んなの言ったら元も子もねぇっつーの。」
「まぁそうなんだけど……。」
「由樹だってアイツに何か感じたから申し出たんじゃねーのか?
少なくとも、俺もお前も考えてることは一緒っつーこんだろ。」
"支えたい"
今は、ただそれだけで充分。
あの子に対して、この距離以上の関係を求めようとするのは……傲慢でしかない。
でも、もしその願いが叶うのなら。
もう次にする願い事は決まっている。
その時は、"変えてあげたい"にしてもいいかな?
「真琴はただ者じゃねーよ。」
「やっぱり……ただの男の子じゃない…。」
「あ?何言ってんだよ由樹。」
「え、何が……?」
「お前……気づかなかったのか?
だってアイツは……____________」