誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
予定かぁ。
仕事は何件か入ってるけど、そっちはそっちの生活、こっちはこっちの生活って言うのがモットーだからなぁ。
「……俺も特には。」
「……あぁ。」
「じゃあ決まりだねっ!!」
「場所とかはどうするの?」
「えぇ、ブラブラすればいいんじゃない?」
「楽って本当に適当だよね。」
ぶうたれてる今泉、本当に見てて飽きないなぁ。
今泉と伊佐波をボーっと眺める。
「……なぁ。」
隣に座っている志浪に声をかけられるとは思ってなかった。
志浪っていつも急だな……。
「……なに?」
「……フード、取らないのか。」
せめて疑問形で喋ってよ。
そう、だね……。
いつまでも3人の前でフードを被り続ける訳にもいかないのも分かってる。
分かってるんだけど……実際に取るってなると少し不安だ。
暗闇の中にひっそりと浮かぶ光が……ユラユラと消えかかる。
どうしたらいいかなんて、もう自分でも分からない。
自分で踏み出せずにその場から動けなくなる。
そんな思いを巡らせていた時、フードごしに温かさを感じた。
いきなりのことに驚いて顔を上げてみれば、志浪が俺の頭を撫でていて。
「……な……ッ、」
「……そんな顔、するな。」
見えてないくせに。
「……顔なんか見なくても、お前のことは分かる。」
そんなことあるはずない……。
「……どうしても、一歩踏み出せないのなら……手伝ってやる。」
下を向いて、せり上がる何かを必死に堪える。
由樹さんも、志浪も。
どうして俺の気持ちが分かるのだろう。
2人が似ているから、許してしまったのかな。
志浪の言葉は、俺の積み上げてきた孤独さにヒビを入れるには充分過ぎた。
俺の頭を撫で続ける志浪の手。
もう……無理だ。
〈真琴、まさか…………ッ。〉
俺はただ、無言で頷く。
撫でていた志浪の手は、ゆっくりとフードをとっていった。
俺もそれを、止めはしなかった。
「……これでやっと、お前をちゃんと見れるな。」
少し瞳にかかる前髪を、志浪の手がそっと上げる。
クリアになった視界。
その眩しさに、思わず目を瞑りそうになった。
それでも瞑らなかったのは、志浪から瞳を離せなかったから。
フードの中からとはまた違う、志浪の瞳の力強さに瞳を奪われた。
「……隠す必要、ない。」
「……ッ、」
「……これでまた、1歩近づいた。」
「……そう、だな……ッ。」
久しぶりの感覚に調子が狂う。
人と瞳を合わすということ。
だけど、不思議と嫌ではなかった。