誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
『……なぜ殺し屋が友情ごっこなど……。』
人を殺すことを躊躇わないお前たちが、なぜ人を大切にするかのようなセリフを吐く。
お前たちは……人を殺すくせに……。
私の両親を殺して、弟を連れ去ったくせに……ッッ。
『なぜ人を殺すッ!?
そんな仲間を思える心があるのに、なぜ他人は殺せるッ!?
自分に何の関係もないからかッ!?
答えろ……黒鮫!!!』
黒鮫のフードからはヒュッと息を吸う音が聞こえる。
「……わ……か、ら……な……い……ッ。
た、だ……僕は……ふた、り……がッ、好き……ッ……だか、ら……ッ。」
"好きだから護りたいと思ったんだ"と聞こえたような気がした。
なぜ。どうして。
そんなの、何も答えになっていない……。
私の問題は何も解決していない……。
恨んでも憎んでも、止まることなく膨らみ続ける私の殺し屋に対する感情。
私の両親を殺し、弟を連れ去ったのは殺し屋だという事実は何も変わらない。
今の私はwhite castle。
護るためだけに存在し、任務をこなすために殺し屋を排除する。
今までだって倒れていく殺し屋は何度も見た。
何も感じなかったし、それが人を殺すことを仕事としている奴らの末路だと思っていた。
それなのに……どうして……ッ!!
黒鮫の言葉を聞いた瞬間、とてつもなく胸が締めつけられた。
あの3人の声が聞こえた気がした……
【僕は真琴といるから楽しいんだよ!!】
【名字じゃなくて、俺は名前で呼んでもらいたいな。】
【……これでやっと、お前をちゃんと見れるな。】
もう遅かった……。
黒鮫の言葉の意味を理解してしまった時点で。
white castleではなく、心の中にいる"剣城 真琴"が反応してしまった時点で。
『……クソ……ッ!!!!』
殺し屋に対する感情がなくなった訳じゃない。
目的もいつか必ず果たす。
だが、今は……
『おい、黒豹!!手伝えッ!!』
武器を落とし呆然と黒鮫を見つめていた黒豹が、ゆっくりとこちらを見る。
「な……に、を……」
『いいからこっち来いって言ってるんだ!!』
黒鮫の傷口に手をあてる。
顔は見えないが、尋常じゃない量の汗をかいている。
……病院に行ってる時間などない。