誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



神城先生の出欠する声が教室に響く。



「知見寺ー。」


「うーす。」



「剣城ー。……あ?今日は剣城は休みか?
ったく、今泉といい剣城といい……あのバカ共は。」










学校初日、私は学校を休まざるをえなかった。



理由は高熱。原因は昨日の術式。



膨大な量の生命力を自分を通して流し込んだため、身体に負荷がかかってしまったからだった。



〈真琴……大丈夫?〉



チョコチョコと寄ってくるビビも、少し疲れているようだった。



「……うん、何ともないよ。
寝てれば治るから。」



〈そう……。〉



昨日のことをボンヤリと思い出す。



結局、黒鮫の出血は無事止まり、black killersは黒鮫を連れて去っていった。



「……俺は、裏切ってしまった……。」



今までの自分を。



家族を殺した殺し屋を憎んでいた自分の心を。



これまで無我夢中でやってきた時間を。



他の誰でもない自分が、裏切った。



〈……そんなことは、ないんじゃないかしら……?〉



青色の瞳が私を見つめる。



〈真琴は、"殺し屋"ではなく"他人"を護ったのよ。
黒鮫は少なくとも、あの2人に愛されている。仲間として。友として。
真琴はwhite castleとしての役目をきちんと果たしたわ。
そう思えばいいんじゃない?〉



殺し屋ではなく他人を……。



黒鮫という呼び名ではなく、本当の名前を持つ誰か。



そう思えば、少しはこの胸の痛みから解放されるだろうか。



「……そうだね。
でも、もう二度目はない。
殺し屋を助けることだけはもう二度と……。」



〈それは……真琴の好きにすればいいわ。〉



ベッドから降りたビビは、ドアまで歩くと振り返った。



〈でも、黒鮫を助けた時の気持ちだけは……忘れないで。
それは、あなたの成長の証だから。〉



と言って、ビビは出ていった。



私の成長……。



確かに、成長したかもしれない。



だけど、成長するのは剣城真琴だけで良かった。



white castleは……私の分身であり憎しみの象徴。



white castleまで成長しなくていいんだ。



あの日のまま永遠に時は止まったままで。



あぁ、頭が痛い。



きっと熱のせいじゃない。



だが、その理由を口に出すことは躊躇われた。



外に、空を見たい……。



フラフラになりながらも階段を上がり、屋上に上がった。


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