誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



「……今日は、曇り空か……。」



まるで私そのものだな……。



屋上の淵に座る。



足をぶらぶらさせると子供みたいで。



プルルルルループルルルルルー、



ボーっとしながら、相手が誰なのかも見ずに電話に出た。



「……はい。」



«……学校、来てないのか。»



予想外すぎる人物からの電話に、驚きすぎて声が出なかった。



«……どうした?»



「……あ……うん。
……体調が、優れなくて……。」



«……そうか。»



「……楽に聞かなかったのか?」



«……楽は休みだ。風邪らしい。»



少し来都の声がいつもと違って聞こえた気がした。



「……そう。」



«……大丈夫か?»



その心配する言葉に嬉しいと思う反面、昨日のことが脳裏をよぎる。



「……寝てれば治る。」



«……そうか。なら、寝ておけ。
何かあったら電話しろ。»



そう言って電話は切れた。



「……胸が、痛いなぁ……。」



どうすればこの胸の痛みは無くなるのか。



どうしたらいいのか。



どうあるべきなのか。



誰か教えてくれるのなら、それを受け入れるだけなのに。



違う自分を演じるのは……辛い。



だが、もうどれが本物の自分なのか分からない……。



今日は、空を見ても考え事をしてしまう。



さっきより頭も痛くなってきた。



「……戻ろう。」



戻るべく立ち上がった時、ふらりと身体が傾いた。



あぁ、思っていたより酷くなってたんだな……と靄がかかった頭で思った時。










「真琴くんっ!!」



誰かが私の腕を引っ張った。



「真琴くんっ、しっかりして!!」



聞いたことがある声だった。



だけど、熱が上がっている頭では思い出せなくて。



視界はぼやけていて顔は見えず、私はそのまま誰かも分からない胸の中で意識を手放した。









< 50 / 182 >

この作品をシェア

pagetop