誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「……今日は、曇り空か……。」
まるで私そのものだな……。
屋上の淵に座る。
足をぶらぶらさせると子供みたいで。
プルルルルループルルルルルー、
ボーっとしながら、相手が誰なのかも見ずに電話に出た。
「……はい。」
«……学校、来てないのか。»
予想外すぎる人物からの電話に、驚きすぎて声が出なかった。
«……どうした?»
「……あ……うん。
……体調が、優れなくて……。」
«……そうか。»
「……楽に聞かなかったのか?」
«……楽は休みだ。風邪らしい。»
少し来都の声がいつもと違って聞こえた気がした。
「……そう。」
«……大丈夫か?»
その心配する言葉に嬉しいと思う反面、昨日のことが脳裏をよぎる。
「……寝てれば治る。」
«……そうか。なら、寝ておけ。
何かあったら電話しろ。»
そう言って電話は切れた。
「……胸が、痛いなぁ……。」
どうすればこの胸の痛みは無くなるのか。
どうしたらいいのか。
どうあるべきなのか。
誰か教えてくれるのなら、それを受け入れるだけなのに。
違う自分を演じるのは……辛い。
だが、もうどれが本物の自分なのか分からない……。
今日は、空を見ても考え事をしてしまう。
さっきより頭も痛くなってきた。
「……戻ろう。」
戻るべく立ち上がった時、ふらりと身体が傾いた。
あぁ、思っていたより酷くなってたんだな……と靄がかかった頭で思った時。
「真琴くんっ!!」
誰かが私の腕を引っ張った。
「真琴くんっ、しっかりして!!」
聞いたことがある声だった。
だけど、熱が上がっている頭では思い出せなくて。
視界はぼやけていて顔は見えず、私はそのまま誰かも分からない胸の中で意識を手放した。