誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
あーだこーだと項垂れ続けていると、お昼になった。
自然と席を立ち、屋上への廊下を歩く。
ただそれだけのこと。
それが日常になりつつあることが嬉しい。
ただ、それを確実に掴むのは私には無理。
それはまるで、ゆらゆら揺らめく陽炎。
屋上には、やはり桜悠と来都が先に来ていた。
「あれ、真琴早いね。もうお昼?」
「……授業サボったんだ?」
「人聞き悪いなぁ。休憩してたんだよ。」
待って。それ、どう違うの。
こういう奴こそが補習になればいいのに。
そういう意味も込めて睨んでやる。
それも笑顔で跳ね返されるけど。
その笑顔を無視でまた跳ね返し、来都の横に座る。
フードを外す。
これも1つの日常。
3人の前じゃもう自分からフードを外すことにしていた。
来都を横目で見ると、考え事をしているように見えた。
でも、その横顔は……少し悲しげな気がした。
「……来都?」
でも、それは気のせいなんかじゃなかった。
こっちを振り向いた時の来都の瞳が。
その言葉は分からなかったけれど、叫んでいるようで。
「……どうか、した?」
そう聞かずにはいられなかった。
「……特に何もない。」
だが、私の頭を撫でるだけで、微笑んだだけで、何も答えてはくれなかった。
私は、来都や桜悠や楽のようにはなれない。
私には、人の心に深く踏み込む勇気なんてない。
由樹さんにだって、1歩が限界。
そんなの分かってる。
でも……掴む努力はしたいんだ。
来都の頭をそっと撫でる。
来都は少し目を見開いていたが、何も言わず瞼を閉じた。
私はただ撫で続けた。
"大丈夫"その言葉が伝わりますようにと願いながら。
「なに、今日の来都は甘えん坊なの?
珍しいね。」
「……別に。」
「嬉しそうなくせに素直じゃないね。」
「……うるせぇ。」
「ははっ、来都が怒った。」
桜悠が空気を変えてくれたこともあって、それからは普通だった。
帰り際、来都が言ってくれた。
「……ありがとな。」って。
その言葉が嬉しかった。
明日は楽が来てくれますように。