誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
夜7時、ある場所に1人の男が歩いてきた。
その男は、誰かから逃げているのか、それとも誰かから追われているのか、怯えきった表情でどこかおぼつかない足どりだった。
そんな男が立ち止まったのは、電話ボックスと街頭しかない場所。
携帯を取り出し、どこかに電話しようとしている。
「あ、あのっ!!約束通り来たんだけどっ!!」
『そんな大きな声を出さずとも聞こえている。』
携帯からではない、近くからの声に男はバッと声のした方を振り返る。
否、振り返るではなく、見上げる、か。
発声場所は、電話ボックス……の上。
見上げた先には、男を見下ろしているであろう2つの視線。
2つ……というより、1人と1匹の。
『依頼主はお前か?』
マントと仮面で隠れているが、背や声を聞いて男は思った。
(少年……?子供か……?)
それに……。
(黒猫……?)
『答えろ。』
「あ、あぁ……。」
肯定と捉えると、その1人と1匹は音もなく降りてきた。
男は、誰かに狙われているという状況をも忘れて、その人物に魅入ってしまった。
「君……white castleなの、か……?」
『……あぁ。』
自分はあの護り屋white castleだと名乗る人物。
正直、未だにこの状況が信じられずにいる。
噂に聞いていた護り屋という存在。
僕には全く関係のないことだと思っていたし、そもそもそんな奴いないと思っていた。
それが今。
何故狙われているのかも分からずに、こうして噂でしか聞いたことのない護り屋に自分の身の保護を申し込んでいるのだ。