誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
ビビと会ったのは、偶然だった。
たまたま道を歩いていたら、複数の野良猫に苛められている猫がいたのだ。
(仲間割れかな……?)
そんな風に思っていた時、
〈ねぇ、助けてくれるかしらっ!?〉
俺の頭に声が響いた。
周りには誰もいなくて、当然自分自身も聞き間違いだと思っていた。
〈ねぇ、そこのあなたよ!!〉
それでも声は止まなくて。
「……あ、あなたがしゃべっているの?」
そう苛められていた黒猫に話しかけると、
〈そうよ!!助けて!!〉
正直、猫が喋るなんて聞いたこともなかったけれど、困っているなら助けてあげたい。
木の棒をがむしゃらに振り回して追い払ったのを覚えている。
その時、俺は中学生だった。
〈あなた、強いのね!
助かったわ、ありがとう。〉
「う、うん。じゃあ……バイバイ。」
黒猫を助けるにしろ、威嚇されまくって怖かった。
その黒猫のお礼を素早く聞いて、その後は走って帰ったものだ。
そのはずだったのに……。
「……な、なんでついてきてるの?」
家にまでその黒猫はついてきていて。
〈私、行く宛がないの。
あなた、私を飼ってくれないかしら?〉
そんな無茶ぶりを、結局引き受けてしまった。
「ビビと会った頃が懐かしいね。」
〈全くあの時の野良猫どもときたら!!
卑怯なのよっ!〉
「あの無茶ぶりのことを忘れているなんて……。」
〈フフッ、冗談よ。ちゃんと覚えてるわ。
真琴には本当に感謝してるのよ?〉
「ちゃんと伝わってるよ。
今はビビにも仕事手伝ってもらってることだしね。」
ビビと出会ってから変わったこと。
それは、ビビを始めとする動物などの声が聞こえるようになったこと。
前は驚きまくったものだが、今では聞こえることが助けになることが多い。
こうして、ビビの気持ちも分かることだし。
そして、その応用編としてまた分かっていることは、動物の特徴を自分に上書き出来るようになったこと。
兎なら跳躍力や脚力の強化。
猫なら俊敏性や判断力、というような。
ただ、この能力は万能ではなく、自分の想いとその相手の想いが同じで、なおかつ調和しなければ発動しない。
だから、この『調和』という能力には波があるのだ。
この能力が自分に宿った時点で、もう自分は普通じゃない。
周りとは違う自分。異質な自分。
だが、護り屋という仕事をするにあたって、普通など必要ない。
そして、それはビビも同じこと。
ビビはその小さな体内から武器を生み出すことが出来る猫で。
ナイフ、刀、長剣、銃を始め、ありとあらゆる武器が出てくる……らしい。
〈私、武器たくさんあるわよ。〉
と何食わぬ顔で言われた時は、開いた口が塞がらなかった。
既に目の当たりにもしているし、仕事をする上で頼ることもしばしば。