無口な彼の愛し方
溢れ出しそうになる涙を堪えるために、上を向き誤魔化す。

一応、ここは会社の敷地内。

誰が見てるかわからないから、こんな所で泣いちゃダメだ。


「麗華?」


とても懐かしく感じる、愛おしい人の声。

その声が、自分の名を呼んだ。

聞き間違いじゃ、ないよね?

あたしはゆっくりと、声の主へと視線を向ける。


「・・・お疲れ」


驚いている充に、労いの言葉を向ける。


「こんな時間に、何してんだよ」


不機嫌そうな充に、切なくなる。

本当、何でいつも不機嫌なの?

そんなにあたしと一緒に居るのが、嫌なの?


「ちゃんと、話しようと思って。部屋のこともあるし」

「・・・あぁ」


都合が悪そうな、めんどくさそうな充の態度に怯みそうになる。

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