無口な彼の愛し方
鞄を取りに、さっきまでいた席へと戻る。


「ごめん、瑞樹。あたし帰るね。お金・・・」


鞄から財布を出そうとしていたあたしのことを、瑞樹が止めた。


「さっき、旦那から2人分貰ったから大丈夫」

「え、嘘」

「本当。ほら、これ以上怒らせないうちに帰りな」


そう言われ、先にお店を出た充の後を追うように、あたしもお店を出た。

あたしのことを待ってくれていたのか、お店の前に充が居た。

あたしが来たのを見ると、充はゆっくりと歩き始める。

そんな充の隣に駆け寄り、あたしはそっと充の手を握る。

充は何も言わず、軽くあたしの手を握ってくれた。

こんな風に手を繋いで歩くのは、何年振りだろう。

あたしの記憶が正しければ、学生以来だ。

その時も、あたしからだった。

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