【完】『そろばん隊士』幕末編
声が飛んだ。
「加納が逃げたぞ!」
確かにすでに加納の姿がない。
原田の槍を受けたはずなので、遠くへは行っていないはずであるが、
「逃げよったな!」
猛者で知られた横倉甚五郎の猛々しい声がする。
「岸島さん、頼む!」
声がした。
そこには二刀流の服部武雄を前に、数人がかりで取り囲んでいる。
が。
手を出せずにいる。
「…服部どの、武士ならば潔く腹を召されよ」
岸島は言った。
「岸島くん、君と一度手合わせをしたかったのだ」
言われたら仕方がない。
二刀流の構えの服部に居合の岸島という間合いになった。
睨み合った。
服部の左が動いた瞬間を岸島は逃さず振り抜いた。
左の手首から先が斬られて飛んだ。