【完】『そろばん隊士』幕末編
つまり。
同士討ちがはじまったのである。
この隙を島田が突いた。
どんどん気にしないで前に進み、すんでのところで奉行所まで、ようやくたどり着けたのである。
これは肝を冷やしたようで、
「あれは油小路のときより生きた心地がしなかった」
とのちに語られている。
が。
芦名は事切れていた。
やはり間違えて撃たれたらしい。
羽織の家紋を見た土方が、
「おそらく近藤さんの身内と間違えたのではないか」
つまり養子の周平と間違えたのではないかと指摘した。
しかし。
「周平は行方知れずになっておることを知らぬということは、いわゆる外様かもわからぬな」
と土方はいい、ひとまず島田と岸島をねぎらい、小荷駄を運ばせた。