【完】『そろばん隊士』幕末編

このようにして。

岸島が河合と見直した請け払いの金額は二十両あまりとなり、これが近藤の耳に入ると、

「われらも新式の銃を買わねばなるまい」

という話となった。

そこで近藤が声をかけたのが、旧知の山本覚馬という会津侯の家中の砲術師範であった。

少し余談となる。

山本と近藤の邂逅は江戸にまだ佐久間象山の塾があった時期で、近藤家のかかりつけの医師であった手塚良仙と佐久間象山が、公儀奥医師の伊東玄朴を通じた知り合いであったところに端を発している。

のちに手塚は幕府で近代化で洋式陸軍を組織した際に軍医となり、将軍の上洛に伴って従軍した折、

「お前の消渇(淋病のこと)を塗り薬で治したのは俺だぜ」

と満座の前で言い放ち、土方に渋面を作らせたこともあった。

その手塚と緒方塾で同窓であった古川春英という医師が佐久間塾出身の山本と親交があり、いわば手塚の縁で新撰組と山本覚馬は他の会津藩士にないつながりを築いていたのである。



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