【完】『そろばん隊士』幕末編
このとき。
名前は新撰組ではなくなった。
「甲陽鎮撫隊」
という新しい名前となり、近藤が隊長となったのだが、原田は、
「江戸に残るぜ」
と言い出した。
「隊長の命令である」
近藤は言ったが、
「おれはあんたの手下じゃねぇと言ったはずだ、なあ岸島」
岸島はあのとき、同席していたから、
「その儀は存じておる」
と言った。
「岸島くんは?」
「実は旧主伯耆守のもとへ帰参いたしたく、願い出ようと思っており申した」
と明かした。
「なるほど…帰参ならばそれは致し方あるまい」
意外にもあっさり、除隊の許可が出た。
「岸島が良いなら、おれも除隊させろ」
江戸詰めが江戸に残って何が悪い、と傲然とした口調で詰め寄った。
「…分かった。原田くんも除隊を許可する」
こうして原田、岸島と、やはり旧主から帰参の声がかかっていた永倉が、除隊となったのである。