【完】『そろばん隊士』幕末編
しばらくして。
勘定方の詰所へ岸島が来ると、酒井兵庫の姿がない。
「河合どの、酒井どのは…」
「酒井さんなら、病で除隊となられた」
沖田の言う通りであったらしい。
「われわれ勘定方はいつも人が足りないのに、ついに二人になってしまった」
河合は人手を足してもらいたいらしいが、何しろ武家はそろばんや金子を不浄と思う向きが強い。
「そういう面で酒井さんは貴重な方であったが、病とあってはなぁ」
こればかりは河合にもどうしようもないことであったらしい。