【完】『そろばん隊士』幕末編
◆5◆
年が改まった。
この年の春、屯所の移転があって、それまでの壬生村から西本願寺の境内の一画へと引っ越したのであるが、これが騒動であった。
何しろ平隊士だけで二百人近くある。
そこへ小荷駄隊、あらたに山本覚馬の提言で編成された大砲隊などの荷物もあり、
「殺生禁断の境内に武具を持ち込むのはどうか」
と意見した僧があった。
すると隊内もっとも文武に秀でていた藤堂平助が、
「まぁ本願寺も織田信長と戦っていたときには境内は武器まみれでしたからねぇ、いろいろあるのでしょう」
とやり返し、それ以降は苦情らしい苦情は出づらくなった。