【完】『そろばん隊士』幕末編
そうしたなか。
岸島芳太郎は組替で八番隊の組長となった谷三十郎の配下となり、平隊士から伍長に昇進し、給金も二十両に増えた。
伍長になると部下が五人つく。
そこで目端のききそうな芦名鼎という平隊士に、そろばんを教え始めた。
この芦名鼎、隊士としては剣が強い方ではなく、
「そのままでは見回りで斬られるのが関の山だ」
という岸島の配慮で、そろばんを身につけさせることにしたらしい。
ともに一刀流居合の同じ流儀で、生国も岸島が丹後宮津で芦名が但馬出石と近かったのも手伝って、すぐに打ち解ける間柄となった。