【完】『そろばん隊士』幕末編
◆6◆
果たして。
見回りが始まるとすぐに赤座伍長は、
「われわれはこの筋を行くから岸島くんは向こうの筋を行け」
つまり二手に分けて見回れ、と言い出した。
「しかしながら、見回りは伍長二人と決まっておる」
岸島は反論したが、
「貴様、新参者の分際で歯向かうのか」
と柄に手をかけたので、
「ならば屯所に伺いを差し立てましょう」
と岸島の配下の平隊士のうち、徳田という部下を本願寺屯所まで使いにやった。
まだ東本願寺の手前なので、四半刻もあれば戻るはずである。
が。
使いが出ていくばくも経たないうちに、
「われわれは見回りを続ける。合流の場所は…正面橋」
と言い、赤座隊はいなくなってしまった。