【完】『そろばん隊士』幕末編
翌朝。
墓地に潜んでいた赤座が捕まって屯所に引き立てられると、
「士道不覚悟につき切腹」
という処断で、岸島は介錯を命ぜられた。
検分役は斎藤一である。
「それがしは居合なので、介錯はいささかおぼえがない」
岸島が言うと、
「ならば居合のやりかたで首をはねればよい」
との斎藤の回答で、
「ならば」
と白洲に立った。
すでに赤座は麻裃で着座している。
「命により介錯つかまつる。辞世かご遺言はございまするか」
「ない」
礼をしようとした瞬間。
赤座が立ち上がりざま脇差を振りかざした。
次の刹那。
岸島の刀が鞘を走り出、弧を描いて首をはね、立て膝のまま胴体が倒れ込み、首は植え込みの松の枝の股に嵌まってとまった。