【完】『そろばん隊士』幕末編
◆9◆
門を出ようとしたそのとき、である。
「おい、岸島くん」
聞き覚えのある声に振り返ると、
「…原田どの」
いたのは原田左之助である。
「お前たち、徒党でどこへ行く」
「局長に面会に参る」
「…近藤さんに?」
脇にいた徳田がざっくりとした説明をすると、
「よしわかった、おれもゆく」
「いや、原田どのにご迷惑をかけるわけには参らぬ」
「おれは近藤さんが、貧乏道場の跡取りだった頃から知っている」
おれに任せとけ、と原田は言った。
「しかしながら…」
「実はな、おれも伊東さんの動きはきな臭いと思っていてな」
だからおれも訊いてみたかったのさ、と不敵な笑みを見せてから、
「とにかくおれもつれて行け」
何かあればおれがなんとかしてやる、と原田は胸を反らせた。