【完】『そろばん隊士』幕末編
◆2◆
かくして。
岸島芳太郎は会津中将家御預、すなわち新撰組に参加することとなったのだが、
「きみの役割は勘定方と会計方になる」
と、案内役となっていた隊長で文学師範の尾形俊太郎は言った。
「実は私も勘定方なのだが、そろばんと帳面の仕事は苦手でだな…」
と、頬を指で軽くかきながら言った。
「勘定方は河合くんと酒井くんがあるから、しかと聞いて仕事を覚えおくように」
「はっ」
岸島は頭を下げた。
廊下を抜けて会計方の間へ行くと、
「本日より新しく勘定方となった岸島芳太郎くんだ。河合くん、面倒を見てやってくれ」
「はっ」
河合耆三郎も返答の仕方は同じになった。