【完】『そろばん隊士』幕末編
芦名の周旋で、小荷駄隊の岸島、尾関、島田の三人とそれぞれの部下の計九人で木屋町の座敷を借り、会食というはこびとなった。
そこで岸島は、
「それがしは若輩ゆえ」
と、尾関と島田の二人を上座に座らせ、みずからは下座に座るという行動を取った。
すると。
「岸島さん、隊長は貴殿なので上座には貴殿でないと困る」
と島田に促され、
「ならば車座はいかがでありましょう」
と岸島が言い、
「車座ならば互いに気を遣わずに済む」
となり、三人はぐるりと座り込んだ。
「車座なぞ久しいのう」
島田は杯を干した。