【完】『そろばん隊士』幕末編
このようにして。
岸島、尾関、島田の三人が打ち解けるようになると、かねてより島田と懇意でもあった原田が加わるようになり、
「この四人で伊東や加納に伍することが出来れば、あれらも好きは出来まい」
と原田は豪語したが、
「はて、それで丸くおさまれば良いのだが」
と岸島は、一抹の不安を徳田にだけもらしている。
年が明けて慶応も三年となると、伊東派の加納や毛内と、近藤派の永倉新八との亀裂が決定的な事態となっていた。
そうしたなかで。
どちらにもつかず、いわば原点回帰で奉公第一という面々が集まった岸島たちの仲間は、第三の派閥になりつつある。
「それがしは派閥なぞ何の興もござらん」
と岸島は言う。
尾関も、島田も「われらはあくまでもご奉公を大事と思っておるまでのこと」と言い、仲間を集めて語らったりするようなことはしない。