【完】『そろばん隊士』幕末編
しかし。
その無派閥の連中だけが集まってくるという、無派閥の派閥という分かりにくい集団は、加納や毛内などの伊東派の者には理解しがたいところであったらしく、
「あの者たちは何かあればご奉公を口にするが、要はことなかれなのではないのか」
と俗物のように見ていたところもあったらしい。
だが。
伊東派であっても、隊にあるかぎり岸島が握る金銭、とりわけ月の手当てがなければ飯にも事欠く訳であり、
「やはりそこがそろばん侍の性根というものよ」
と、特に加納道之助あたりなんぞはしたたかに放言していた。