【完】『そろばん隊士』幕末編
このあと原田がどう具体的に動いたかは資料がないが、配下である三浦常三郎に対し、
「御陵衛士たちとはいつか斬り合うかも分からぬから、さまざまな鍛練だけはしておけ」
と言い、岸島も三浦の居合の稽古に立ち会ったほどであった。
「三浦どのは、居合の筋がよい」
もしかしたらそれがしより強いかも分かりませぬなぁ、と笑いながら原田に語るほどであったが、
「私は原田さんに恩がありますから」
と三浦は言った。
聞けば、背が低いことを理由に入隊を断られたところを、
「人の志を背丈だけで決めるものではない」
と、たまたま通りかかった原田が口添えし、入隊を許されたのだという。
「今こうしてご奉公できるのは、原田さんのおかげでございまして」
原田の思わぬ面を、岸島は見たような気がした。