【完】『そろばん隊士』幕末編

そういういきさつで覚書を取った岸島は、近藤に連れられるように土方がいた稽古場へ足を踏み入れた。

「トシ、話がある」

「…それがしはこれにて」

岸島は去ろうとしたが、

「岸島くん、証人としてそこにいたまえ」

「はっ」

岸島は板の間に座った。

「例の積み立ての金の件だが、岸島くんがいろいろ調べてくれてな」

「…近藤さん、あなたでしょう」

近藤は言葉に窮した。

「まさか岸島くんを切腹させる気ではないでしょう」

土方はそこまで見抜いていたらしい。

「岸島くんは役目で調べたまでのこと、なんの咎めもない」

これで、積み立て金の話は片付いたようであった。



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