【完】『そろばん隊士』幕末編
◆24◆
が。
「岸島くん、稽古をどうかね」
土方は誘った。
「それがしは居合、しかもお手合わせができるほどの腕ではございませぬ」
岸島は辞したが、
「いや、腕前を見たいのだ」
と言われては、断る理由も失われた。
「では」
というと岸島は大小を刀掛にかけ、羽織を脱いで股立ちを取ってから、襷を手早く結んだ。
「では一本」
岸島は木刀を腰に差したまま一礼し、腰を落とし木刀に手を掛けた姿で、間合いを少し広げ気味に構えた。