【完】『そろばん隊士』幕末編
◆25◆
油小路七条の辻に駆けつけると、辻の真ん中に仰向けに何やらある。
月が照った。
明らかに遺体である。
「あれが伊東甲子太郎の、成れの果てよ」
原田が顎で指し示した。
「亡骸を弔うのか」
岸島は訊いた。
「違う」
原田はニヤリと笑い、
「まぁ見ておけ」
隠れろ、と言われるがまま天水桶の陰に身を潜めた。
しばらくして。
ばたばたと足音がした。
「…あったぞ!」
聞こえたのは加納道之助の声である。
「伊東先生、なんということに…」
藤堂平助である。
「あれは…あのときの」
まぎれもなく、面接のときのあの武士ではないか。