春のあなたへ
かと言って彼が真面目だという印象が消えることもなくあの夜見たことは私にとって本当に意外なことだったのだ。

その夜私は両親の25年目の結婚記念日ということでレストランで食事をしていた。

来るはずだった兄が仕事で来られなくなり私は一人で厄介な程にいちゃつく両親の相手をしなければいけなかった。

両親は私の知る限りずっと仲が良くまるで新婚の様に楽しそうに食事をしている。

そんな二人を尊敬しているもののやはり目の前で見せられると思う所がある。

私は少し外の空気を吸ってくるという名目で席を立った。

少々お高いこのレストランは未成年がこんな時間にうろつくには適さない少し治安の悪い所に建っている。

私もそれを知っていたからレストランから完全に出ることはせずウェイターの見える位置で外を眺めていた。

今夜は星がよく見える良い夜だ。

見ているだけだが良い暇潰しになる。

まったく兄さんが居ればあのいちゃつく両親の相手をすることは回避できた筈なのに。

仕事なら仕方がないとは思いながらも小さくため息をついた。

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