タバコと数式は思い出の中に ~私の好きな人は先生~
その病状をこの目で確かめたのは先生の誕生日が迫った前の週だった

弟と4人で病室に入ると私は目を疑った

先週までとは変わってしまった姿のおばあちゃんがそこにいた
黄疸で黄色くなった肌は不健康で、痩せている体がさらに痩せて、小さくなっていた

家を出る時に、母に「薬とかで、意味分からんこと言いだすかもしれへんけど、適当に相槌打っておいて」と言われたとおり、おばあちゃんは8割会話がかみ合わなかった

驚きよりも訳の分からない恐怖がこみあげてきた頃

父が「そろそろ帰ろうか」と言った

こんな事を思ってはいけないはずなのに、私はこの時安心してしまった

そして、そんな自分に吐き気を感じた

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