タバコと数式は思い出の中に ~私の好きな人は先生~
あれは唯の詭弁だったのだと、私はこの時思った

冷たくなったおばあちゃんの肌は、まるで蝋で出来た蝋人形のように見えた

生気のないその感じが、いっそうそれを感じさせる

変な気分だった

これは本当におばあちゃんなのかと疑問に思った

花を弟とともに、おばあちゃんの上に置くと、私は逃げるように後ろへと下がった

下がって俯いていると、母の嗚咽が聞こえて顔をあげた

おばあちゃんを見ても泣けなかった私の目から、頬を伝って流れるものがあることに気づいた

私はそうやって、母の姿を見て泣いた

周りはおばあちゃんの事で泣いているように見えたかもしれない

でも私は最後まで、おばあちゃんを思って泣けることはなかった

係りの人に再び渡された花を、おばあちゃんの棺に入れながら、私は「ごめん」と様々な気持ちで謝った
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