タバコと数式は思い出の中に ~私の好きな人は先生~
立ち上がろうとする彼を制して、私は彼の向かいの席に腰を下ろした


「昨日の事、ちゃんと話しておきたいの」


私が彼から目を逸らした事は何度かあったが、彼から目を逸らされたのは初めてだった

それが『ああ、この人私の事ちゃんと好きなんだ』と思わせた

きっと、私がなんと返事するのか分かっているのだ

それでも、一端逸らされた目は次の瞬間にはちゃんと私を見据えていた


「昨日の事、俺は謝る気なんてないから。俺はお前が好きだよ」


恥ずかしげもなく言ってくる分、こっちが恥ずかしくなってくる

好きだなんて、初めて人から言われた



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