たった1つの宝物

〜先生、おしえて〜

「うぅ、できなかった…」
『鈴木 さやか』16歳、季節は初夏。

本日の中間テスト(も)撃沈…。

「サヤカはちゃんと授業聞いてるし、丸っきり理解してないわけじゃないのにね?なんでだろ?時間足りなかったの?」

そう話しかけてきたのは隣の席の『一宮 楓』(いちみや かえで)ちゃん。 彼女はうちの学園理事長のお孫さんで、頭も良く学年上位トップ3に常に入っている、いわゆる優等生。
物言いはハッキリしているけど、性格が悪いわけじゃないんだよ?
むしろ、「良いものは良い!悪いものは悪い!」と言える勇気を持っていて私は彼女が大好きなの!!
ちなみに、高1からクラスが一緒で私の親友!
だから、今の発言も出来る子の嫌味ではなく、純粋に何でなのかという疑問を口にしただけなのだと私にはわかる。

「うん、時間足りないのは勿論なんだけど、やっぱりわからないところが何個かあって、そこでどうしても止まっちゃうからますます時間がなくなっちゃうんだよね…。」

私は素直に、今日のテストの反省点をすみやかに分析して答えた。
時間足りないのが【当たり前】の様な発言をしているけど、私は自他共に認めるのんびり屋さん。
何事にも時間がかかるし、楓ちゃんもその事はよくわかっているので特に突っ込んでもこないし、だから時間が足りなかったのかと訪ねてきた。

「昨日の放課後、一緒にテスト勉強やった時は出来てたのにねぇ?」

今日はテスト最終日でした!
だから、その前の最後の足掻きに楓ちゃんを付き合わせ、昨日の放課後ファミレスでテスト勉強をしたのです!しかも、楓ちゃんはすでに勉強済みだからと私の家庭教師を買って出てくれました!!


なのにこの始末……。


自分でもなんで昨日出来て今日出来ないのか理解不能です…。
誰かその答えを教えてください…。

「まあ、今日の結果はもうどう足掻いても変えられないし、数日中には張り出されちゃうんだから期末にまた頑張りなさい!また勉強見てあげるから!!」

言いながら余裕な楓ちゃんは私の頭をポンポンしてくれるけど、私は次もあまり出来る気がしない。
だって、1年の時もまったく同じやり取りをテストの回数分してきたのだから…。
1年の2学期くらいまでは次はもっと頑張ろうと張り切ってたけど、ちっとも変化なし!
でも、とりあえず毎回平均点くらいは取れてるから、もう半分諦めていたりもしています…。

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