春夜の誓い
くっそ!何で出ねぇんだよ!


綾人の頭に最悪の事態が浮かぶ。


そんなのある訳ねえ!あいつに限って!


必死に自分に言い聞かせて、何度も電話をかけ直しながら走る。


焦りですぐに息があがり、部活終わりの身体は長い上り坂に悲鳴をあげる。


足は鉛のように重く、心臓と肺が爆発しそうだ。

口の中に血の味が広がる。


ふざけんな!ちゃんと動けよ俺の身体!


限界だと叫ぶ身体を気力で抑え、坂を上りきる。

駅まであと200m。

最後の力を振り絞り走り続ける。


100m。

千華の別れ際の笑顔が脳裏によぎる。


50m。

視線の先に人だかりが見える。


神様でも悪魔でも何でもいい!お願いだ!


ざわめく野次馬に突っ込み、必死に人をかきわけ進む。


「怪我人は?」


「さあ、でも何人かひかれたらしいぞ」


そんな声が聞こえ、気が狂いそうになる。


先頭に出ると、さっきちょうど千華が座っていたベンチに車が突っ込んでいた。


ひしゃげた車体が事故の衝撃を物語っている。


救急車が目に入る。


頭ががんがんと割れそうに痛い。


規制テープが張られこれ以上進めない。


綾人は舌打ちして、人混みを抜ける。


警官に千華がいないか聞こうと足を踏み出した瞬間




「あーくん?」




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