大好きなふたり
三角関係

親友の気持ち?自分の気持ち?

「とーわーっ!」

後ろから少し高い感じの声がかけられた。

声の主は、野村まどか。

私、尾崎十和子の唯一無二の親友。

ゆるふわぱーまの肩までの

セミロングが似合う彼女は、

同級生のなかでも

飛び抜けて可愛らしかった。

そんなまどかが

こんなショートボブで少し大雑把な私と

仲良いのはいつも不思議だった。

でも、心のどこかで私は、

彼女のことを

快く思ってなかったのかもしれない。

お勉強より運動!スカートよりズボン

というどうにも女子力のない私が、

恋をしたのはつい先日のことだった。

バゴッと大きな音と共に頭に痛みが走る。

少し間をおいて、自分に

バスケットボールが当たったことに気づく。

「ごめんっ!!尾崎っ!!痛かっただろ?保健室、行こ、な?」

私にバスケットボールを当てた張本人で

男っぽい私にかけるには優しすぎる言葉を

くれたのが大倉修くんだった。

そんなどっかのドラマで見たことあるよーな

そんな出来事がきっかけで

私の初恋は始まったのだ。

「尾崎ーっ!なぁなぁ。消しゴムもう一個持ってる?」

大好きな声が急に聞こえて。

大慌てで返事する。

「ふぇっ!?あ。ああ。消しゴムね。あるよっ。」

サンキュ。そんな一言でさえ、

自分に向けられたと心のなかで喜んだ。

そして、、、。数ヶ月経った。

「十和子!なぁなぁ。俺の第2ボタン欲しーだろ?」

そんな図星のことを得意気に言う修に

大慌てで返す。

『好き』ってばれたらきまずいもん。

「はぁ!?そんなことあるわけないじゃん。やだなー。もー」

なーんてこと言いながら心の中では


≪やだ、修の第2ボタン欲しいよ!!≫


って思ってて。

でもさ。修は気付いてたと思うんだ。

私が、ウソ。下手だから。

そんな修と私はいつのまにかみんなに

カップルみたく仲良い二人って思われてて。

ほんとはカップルじゃなくて

めちゃめちゃ仲良い友達同志

って思われたせいで、

なんだか。告白しづらくなってた。

でも。こんな穏やかな一番修に

近い女子でいられるなら友達でも構わなかった。






でも。事件は起こった。

「あのさぁー。とわ。あたしね。」

私の事件の始まりは卒業間近の

大親友まどかの言葉。

「大倉くんが好きなの。とわ。大倉くんと仲良いでしょ?協力してくれない?」

、、、。

ウソ。ウソ。ウソ。ウソ。ウソ。

なんで?なんで?

まどかが修のこと。、、、好きなの?

「えっ!?ああ。急にびっくりしたぁ~。えと。いつから好きなの?」

とっさに出た言葉はしどろもどろだったけど。

まどかは怪しむことのなく

私の質問に答えてくれた。

「んー。あたし。先月から好きなの。だって。引退試合の大倉くんがかっこよくて。」

え。そんな修のこと。顔で好きになったの?

そんなの、、、。

ひどいよ。


ううん。ひどいのは、、、。


私だ。



自分より可愛いまどかが修のこと、

好きって知って負けるなんて思って焦って。

まどかのこと。

攻撃したくなってるんだ。

そんなのだめだ。親友を傷つけたくない。

それからの私は自分で

自分をコントロールするのが

すごく難しくなった。

恋は人を変える。

確かにそうだなと思った。

そんな考え事しながらカバンに

荷物を積めたせいか。

下駄箱でペンケースを忘れたことに気づく。

「あ。忘れ物しちゃった。」

そう。一人ごちて、教室に向かう。

見えてきた少し塗装のはげたドア。

それに手をかけたとき。

中から声が聞こえて、手をとめた。


「、、、。大倉くんっ!」

それはキレイなソプラノボイスのまどかの声で。

「話って、なに?」

それに応じる声は愛しい愛しいあの人の声で。

「大倉くんがっ!!好きなの。あたし。あたしと付き合って下さい!」

だめだ。終わった。

まどかが告白したら断る男の人なんていない、、、

「ごめん。それはできない。」

え?と思ってうつむいていた顔を上げる。

なんで?

まどかを嫌いな人なんていないのに。

「俺。野村のこと嫌いじゃない。でも。彼女にしたいやつは一人だけなんだ」

うっ、、、。

クスクスと安らいだ微笑みの

こもったような笑い声をふくんだまどかの声。

「分かった。ごめんね。困らせて。その応援するよ!」

なんで。フラれたのに笑ってるの?まどか。

「ごめん、、、。」

そんな謝る修の肩をぽんっと叩いて。

「いいの!いいの!とわが好きなんでしょ?」


え、、、!?

とわ?とわって、、、。

私の名前だ!

修が私のこと好きなわけ、、、

「あー。バレてたかー。そーだよ。十和子が俺が彼女にしたいやつ。」


え。あ。ウソ!?

「やっぱり!、、、だってさ!とわ!隠れてないで、出ておいで!」



急にまどかが私のいるドアの方を見て、

そんなことを言うのが

ドアのガラスから見えて。

盗み聞きがバレてたと焦って。

逃げればいいのにパニクって

とっさに教室に入った。

「え!?あ!?十和子!」

慌てる修と

いたずらっぽい笑みを浮かべているまどか。

どうやら随分、前からまどかは

私に気付いてたらしい。

「とわさ。ほんとは大倉くんのこと好きでしょ。あたしが好きになったなんて言わなきゃ。とわ。動けないでしょ?」

そんな急にまじめで優しい顔で。

そんな事言われたら。

まどかに黒い感情ばっか抱いてた

最近の私がいたたまれないよ。

「あ、、、。ううん。そんなことないよ。」

とっさに出たのはごまかしの言葉で。

「いや。でも。ここ。ふつう、あんたのせいで。とかになるんじゃ、、、?」

まどかがそんなこと言う子じゃないのは

わかってるけど。

私がこんなこと言ってしまったのは

このふつう、修羅場になるのに状況が

穏やかなことが理解できなかったから。

「はぁ?何いってんの!あたし達、親友じゃん。親友の初恋実るのうれしいに決まってんじゃん!」

まどかを信頼してないみたいな

ひどいこと言った私に返ってきた理由は

すごく温かくて、嬉しかった。

「十和子、俺と、付き合ってくれる?」

暖かな親友の言葉の後に

聞こえたのはずっとずっと

修から聞きたかった言葉で。

「うんっ!喜んで!ありがと。まどかぁ。おさむぅ」

まどかの言葉が嬉しくて、

修の言葉が嬉しくて。

気付いたら。

私は泣き出していた。

そんな私を抱きしめてくしゃくしゃと

頭を撫でながら。修が

「やっと。俺のもんになった」

その後、あのまどかの告白はウソだったこと

をきいた。

まどかは修の親友の翼くんが好きだったらしい。



今、私達。『親友』はそれぞれの大好きな人と共に幸せな日々を過ごしている。
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