【短】雨音に耳をすまして
交差する音
―*―
「ねえ、聞いてる?」
おでこをつつかれて、あたしは我に返る。
あの時と変わらない人が目の前で笑う。
「いきなりなに?」
あの日に出会い、今日が二回目。
二回と言っても、彼は雨の日のことを覚えていない。
今日のことも、たまたま寄ったCDショップに居合わせただけの存在。すぐに忘れてしまうかもしれない。
「だから、こういったラブソングに共感出来ないのってさ。理由があるんだよ」
「理由?」
「お前さ、恋したことないだろ」
「は!?」
腹が立った。
お互いのことを知りもしない関係で、そこまで言われるとは思わなかったから。