【短】雨音に耳をすまして
初恋もまだなのかと罵られているように感じて、彼が途端に嫌いになる。
「……あるよ」
別に嘘をつかなくてもいいことかもしれない。
でも、恋をしたことがないと言われて、子供に見られたような気がして我慢できなくて。
なぜか、彼には負けたくなかった。
対等の立場でありたいと思い、嘘をついてしまう。
……やっぱり子供だ。
「嘘だね」
その嘘もすぐにバレてしまい、恥ずかしくなって目をそらす。
「うるさいな。あんた、誰?」
「理久(りく)」
「は?」
「だから、理久。よろしく」
「なにがよろしくよ」