【短】雨音に耳をすまして


 軽音部と言っても、入部はしていなかった。友達に誘われて見学して、そのまま入り浸っていただけ。


 好きなCDも聴き放題。好きな本も落ち着いて読める。
 何より、口うるさい親がいる家よりリラックス出来た。


 部員じゃないって、追い出されることもなかったし。


 だから部員の顔など覚えていない。あたしは軽音部ではなかったのだから。



「オレ、一応部長やってたんだけど」

「ふうん」

「ふうんって、忘れた?」

「わたし、軽音部じゃなかったし」

「だろうな。部員の中に名前なかったしな」

「調べたんだ」

「いや、ほら。トラブルあったじゃん。美音が冷たい女とか言って部員の奴が責めてさ。オレが助けたんだけどな……」

< 14 / 34 >

この作品をシェア

pagetop