【短】雨音に耳をすまして
軽音部と言っても、入部はしていなかった。友達に誘われて見学して、そのまま入り浸っていただけ。
好きなCDも聴き放題。好きな本も落ち着いて読める。
何より、口うるさい親がいる家よりリラックス出来た。
部員じゃないって、追い出されることもなかったし。
だから部員の顔など覚えていない。あたしは軽音部ではなかったのだから。
「オレ、一応部長やってたんだけど」
「ふうん」
「ふうんって、忘れた?」
「わたし、軽音部じゃなかったし」
「だろうな。部員の中に名前なかったしな」
「調べたんだ」
「いや、ほら。トラブルあったじゃん。美音が冷たい女とか言って部員の奴が責めてさ。オレが助けたんだけどな……」