【短】雨音に耳をすまして
忘れていた音
―*―
ほんの少し前。春だった。
桜の描かれた優しい雰囲気のCDの存在は、友達の雑誌を見て知った。
あまり有名ではない歌手だったこともあり、初回特典盤は数枚しか店に置かない。
知ってはいたけれど、突然、雑誌で知ったために発売日にお金が足りない不運。
本当は発売日に買いたかったのに、断念せざるを得なかった。
買いに行ったのは、発売日から一週間が経った頃。
『あった!』
最後の一枚が新譜の棚に並んでいて、思わず声を上げていた。
『あった!』
そのCDに同時に手を出して、同じように叫ぶ彼。