【短】雨音に耳をすまして


 男性のすらっと長い指先が触れていたことに驚いて、あたしは一瞬動けなくなった。


 直後、同時に手を引っ込めたけれど、あたしは顔が熱くなるのを感じていた。


 その時の彼は、

『このCD買いたい奴に初めて会ったよ』

 なんて言って笑っていたっけ。



『あたしもです』



 だからあたしもドキドキを誤魔化すように頷いた。



『気が合うかもね。オレたち』

『え?』

『それ、買いなよ。オレは別の店に行くからさ』

『でも!』

『ここでオレが買ったら、カッコ悪いだろ?』

『そんな。あたし……』

『いいから、買ってよ』

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