【短】雨音に耳をすまして
彼の音
―*―
理久と会話を交わしたのは、今日が初めてじゃない。
そう気づいて、彼を見上げれば少し悲しげな表情をしていた。
「やっぱり、忘れてた?」
「今、思い出した」
ほんの少し前のことなのに忘れてしまっていた。
人に興味がないのだと、改めて認識する。
認識した途端に、自分の性格が嫌になる。本当にショック。
「……ごめんなさい」
「いや。そんなに謝らなくても」
友達にさえ冷めていると言われている。そんな性格で恋なんて出来るはずがない。
理久の言う通りだ。
初恋の歌が心に響かないのは、あたしが恋をしたことがないから。